本報告では,合成開口レーダ(SAR)画像から自動目標認識(ATR)を行うための畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の平行移動不変性について検討する.ここで,SAR ATR用CNNの平行移動不変性は,SAR画像から抽出された目標チップのミスアライメントに対するロバスト性を表している.この平行移動不変性を理解するために,MSTARの目標チップを10クラスに分類するCNNをデータ拡張有/無の条件で学習させ,CNNの平行移動不変性を可視化した.この結果,MSTARの目標チップのようなアライメントされた画像をデータ拡張せずに用いるCNNの平行移動不変性は,ディープ・レジデュアル・ネットワークを使用してもあまり大きくなく,拡張した学習データの使用が,平行移動不変性のより重要な要素であることが分かった.更に,データ拡張を行ったCNNは,最高水準の分類精度99.6%を達成した.これらの結果は,ドメイン特有のデータ拡張の重要性を示している.
© 2017 IEICE